職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第162号
               令和2年11月15日発行
      職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

                   今回の目次
           □
 消滅時効に関する新旧民法の違い


  消滅時効に関する民法の新旧条文を比較しますと、新民法の方が断然分かり
易くなっています。  

  例えば、旧民法167条1項に「債権を10年間行使しないことにより消滅する」と
書かれていながら、同法145条では「当事者が援用しない限り裁判をなすことを
得ない」と書かれています。

  そこで、一般の人が読んだ場合、10年の時効期間が経過しても時効を当事者が
裁判で援用しなければ債権は消滅しないのか、裁判外での援用は認められないの
かという疑問を抱くのが普通ではないでしょうか。

  実はこの疑問はずっと前から法律専門家の間でも議論がなされていたことで、
現在の判例・通説ではこう解されています。  

 1 10年の時効期間が完成した場合、当事者の援用により債権の消滅が確定
   する。
 2  当事者による消滅時効の援用は、裁判所外でも認められる。

  つまり、当事者の援用が停止条件になっており、10年間の間に債権者の裁判上
の請求その他時効中断事由(旧民法第147条)がない場合、当事者の時効援用に
より債権の消滅が確定するということです。  これを実体法説(停止条件説)と云い
ます。

  ところで、信用保証協会の求償債権などに、消滅時効の完成前に裁判上の請求
がされていない案件が結構ありますが、その理由として印紙代や弁護士費用が高額
であることが考えられます。

  その一方で、信用保証協会が主債務者や連帯保証人を呼び出して、債務承認書
に署名・押印させたり、連帯保証人と分割返済(毎月1万円程度)の和解契約を締結
することが一部に見られます。

  新民法では、訴訟提起の負担軽減と和解的解決の推進を図る趣旨から、時効の
完成猶予制度が新設されました。

  イ 催告(裁判外の請求)をすれば、その時から6ヶ月が経過する日まで時効完成
    が伸びる(新民法第150条)。   再度の催告は、出来ない。

  ロ 権利について協議を行う旨の合意を書面で行うと、1年~六箇月は時効が
    完成しない。  再度の合意は出来るが、猶予がなければ時効が完成してい
    た時から5年を超えられない(新民法第151条)。


  要するに、新民法では、裁判外の請求である「催告」にも6ヶ月間の限定で時効
の完成猶予の効力が認められ、

  また、協議をする合意を書面で約束すれば、最長5年まで時効の完成が猶予され
ることが可能になったのです。


  しかし、この猶予制度は信用保証協会の保証付融資に限って云えば、これまでの
状況をがらっと変えることはないと思われます。 

  どういうことかと云いますと、
信用保証協会の保証付融資の借主は中小企業であり、それが経営不振で支払困難に
なった場合、代位弁済以後に事務所を閉鎖し休眠会社になっていることが多いのです。

  であれば、猶予制度に拘らず、これまで通り連帯保証人と毎月1万円の和解契約を
締結するという手法は維持せざるを得ないのではないか。

  そうすると、連帯保証人の一部弁済は相対的効力しかないので、代位弁済から5年
以上経過後に連帯保証人から主債務の消滅時効を援用される可能性も温存されること
になります。

  一方、主債務者を呼び出して債務承認書に署名させる手法の方は、これまでも一部
に限られていました。  
  主債務者の承認には、旧民法では裁判上の請求と同じ時効中断効(絶対的効力)が
あるので、協会側からすれば止められない手法です。

  しかし、新民法では主債務者の承認に相対的効力しか認めていないので、この手法
は骨抜きにされたことになります、

  
 次に、時効の裁判外での援用ですが、四宮和夫氏はこう述べています。

「・・・道徳の問題は、この放棄・援用という形で、法の世界にとりあげられることに
 なる。  この意味の援用は、放棄と同じく、裁判外の行為によって行なうこと
 ができなければ
ならない」  (民法総則第3版 .333頁)

  判例・通説の実体法説(停止条件説)では、援用まで債権の消滅は確定してい
ないのですから、時効完成後の弁済も当然有効な弁済となりますし、
 主債務者が消滅時効を援用してから弁済した場合には、非債弁済ということに
なります。


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