職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第154号
                 令和元年6月17日発行
        職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

                         今回の目次
                  □
  誠実対応義務と消費者契約法


 
  前回、トライクのレンタルオーナー商法で500人近い人が「クレジット代金の負担は要ら
ない」と騙されて、最終的に120万円~160万円位のクレジット残債を負わされるという事件
のことを書きましたが、その続きになります。

  この事件は、信販のシステムが孕む構造的な危険を巧みに利用し、かつ法の盲点を突
いた極めて悪質な詐欺商法です。

  最大の盲点は、契約当時の割賦販売法と消費者契約法及び判例では、個別クレジット
契約の取消が出来なかったことです。

  どういうことかと云うと、「クレジット代金の負担は要らない」と不適正な勧誘をしたのが、
加盟店と提携関係にあった外部の第三者Aであった為、加盟店の不実の告知等を前提と
する割賦販売法で取消が出来ず、

次に、改正消費者契約法で「クレジット代金の負担は要らない」のような動機に関する重要
な事項に係る取消が認められたのは、平成29年6月3日以後の契約からだったからです。

  個別クレジット契約の取消が出来ない結果、トライクの納車未了を以て支払停止の抗弁
を主張するしかありませんでした。


  この主張もクレジット会社の確認の電話時に「自己使用目的です」と答えていた為、認め
られるのか半信半疑なところがありました。

  結局、セディナ提訴の裁判では、支払停止の抗弁が信義則に反するとして認められませ
んでした (東京簡易裁判所平成31年3月18日判決)。


  平成21年12月1日施行の改正割賦販売法では電話等による加盟店調査管理義務が法律
上の具体的義務とされた結果、同法に明文で規定されていないものの、裁判では信義則とし
て顧客の誠実対応義務を重視されることになったのです。
 
  顧客が「レンタル目的です」と答えていれば、個別クレジット契約は決裁されず顧客も損害
を蒙ることはなかったでしょう。

  しかし、顧客は外部の第三者Aの欺罔行為のマインドコントロール下にあったのであり、レン
タル目的の個別クレジット契約は決裁されないという認識もなかったのですから、

従って、加盟店の不正行為(レンタル目的で販売するという加盟店契約違反行為)に積極的に
加担するという故意から「レンタル目的です」と答えた訳ではないのです。

 
 一方、クレジット会社側には前回のメルマガに書いた通り、通常の加盟店管理体制が劣化
していたとしか云えない現状が認められます。

  騙されていた顧客と手抜きをしていたクレジット会社の落ち度を比較考量する時、クレジット
残債の全てを顧客に負わせるのはバランスを欠くように思えるのです。


  現在、加盟店と提携関係にある外部の第三者による動機に係る重要事項の不実告知等に
対しては、割賦販売法による個別クレジット契約の取消が使えません。

  しかし、消費者契約法第5条による個別クレジット契約の取消なら、平成29年6月3日以後の契
約から使えるのです。

  支払停止の抗弁が誠実対応義務重視の観点から認められないことがあるとすれば、消費者契
約法第5条が最後の伝家の宝刀となったのです。
 

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