職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第149号
               平成31年1月14日発行
        職人型内容証明仕掛人が一発解決目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

                        今回の目次
               □
生き馬の目を抜くレンタルオーナー商法



  少し前までの個別クレジット契約に係る販売店の不正な販売行為と云えば、
名義貸しでした。

  「支払負担は不要です」からと云って、何人もの人から承諾を得て名義を借り、
架空売買の個別クレジット契約を締結してクレジット会社から多額の立替金を取得し、
やがて倒産して行方をくらますというものです。

  現在では、「支払負担は不要です」は「動機に関する重要事項の不実の告知」(
割賦販売法第35条の3の13第1項6号)に該当し、名義を貸した人は個別クレジット
契約の取消が出来ます(平成29年2月21日最高裁判決)。

  この判例により、クレジット会社は名義貸人にクレジット代金の請求が出来なく
なっています。

  さて、昨年、レンタル目的でトライク(三輪バイク)の個別クレジット契約が、
クレジット会社の目を潜り抜けて多数締結されているのが発覚しました。

 外部のO氏という人がレンタルオーナー商法なるものを考案し、トライクの販売店
と提携して売れなかったトライクの売上急増(2年間で500台も売れる)を齎していま
した。

  O氏は面談又はLINEで契約者とレンタルオーナー商法の合意を結び、トライクの
販売店に紹介していました。  契約者は友人にこの商法を紹介するので、連鎖的
に契約者が拡大して行きました。

  レンタルオーナー商法の誘い文句は、「トライクのオーナーになれば毎月のクレ
ジット分割金をレンタル料として支払う」というものでした。 
 しかし、オーナーになって1年~2年後にO氏からの支払は止まり、トライクの所在
は不明でクレジットの残債だけが残りました。



  さて、このレンタルオーナー商法は名義貸し事案と似たところがあります。
「支払負担が不要」「納品がない」「個別クレジット契約は成立している」などは
同じです。

  しかし、不実の告知をしたのは外部のO氏なので、個別クレジット契約の取消が
出来ません。
そこで、納車未了による支払停止の抗弁を主張することになりますが、クレジット
会社からは支払停止の抗弁が信義則に反するとの反論があり、これが争点にな
ります。


  ところで、本トライク案件はクレジット会社に有利な証拠(文書)が少ないという
特徴があります。
作成されていない文書に次のものがあります。

1 クレジット会社の所有権留保を証する車検証(所有者がクレジット会社ではなく
 契約者になっている車検証しかない)
2 レンタルオーナー商法に係る契約者とO氏との合意文書
3 トライクをO氏に引渡すことを以て納車と見做す旨の販売店との特約文書
4 個別クレジット契約書、販売契約書 (通信販売の扱いの為、作成不要である)


  3が存在しないとすれば、クレジット会社は納車を証明することが出来ず、
支払停止の抗弁は信義則に反しない限り適法になります。

  信義則違反の判断基準については、前述の最高裁判決で支持されている
第一審や広島高裁岡山支部平成18年1月31日判決の下記判断が参考になり
ます。

 「信義則に反すると認められるような特段の事情とは、何らかの過失や
不注意があるだけでは足りず、・・・・自ら積極的にこれに加担したというよう
な背信的事情がある場合
をいうものと解するのが相当である」


  契約者がクレジット会社からの架電時に、販売店から云われるまま「自己
使用目的です」と答えたとしても、それが背信的事情に当たらないと思います。

  そもそも、2が存在しないのですから、本契約がレンタル目的であることを
証明出来ません。
また、1が存在しないとなれば、クレジット会社は保留所有権の侵害も主張出
来ません。

  また、販売店が直接O氏にトライクを引き渡していることが、販売店とO氏と
の間にレンタル目的に係る提携関係があったことは推測されるとしても、3が
ない以上、販売店の納車義務違反つまり債務不履行になります。

  結局、トライクの行方不明は販売店の債務不履行中に起こったことで、
契約者の善管注意義務違反とは無関係であり、支払停止の抗弁は何ら信義
則に反しないことになります。

  本トライク案件はクレジット会社に加盟店調査管理義務を尽くせば決裁
されなかったものです。
クレジット会社の脇の甘さを突き、証拠文書を少なくして、名義貸しのような
複雑な論点を回避しているところなどは、生き馬の目を抜くような感じがして
来ます。


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