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    < エッセー>  債務整理トラブルの背景
    
  改正貸金業法が平成22年6月18日から完全施行されています。 
消費者金融の上限金利は利息制限法の上限を超えることが出来なくなりました。
つまり、元本100万円以上は年10%、10万円以上100万円未満は年18%、10万円未満
は年20%が上限金利とされたのです。
 平成19年頃まで消費者金融の大手から中小まで揃って年27%を取っていました。 
なぜそれが許されたのか、どんな経緯を辿って法改正に至ったかは、次のページに書
いてあります。   http://lantana.parfe.jp/kabarai.html
  貸出金利が下がった上、総量規制により収入の三分の一までしか貸せなくなった
のですから、消費者金融業者にとっては苦難の道が始まったと云えます。
そんな消費者金融業者を横目に債務整理という商売が盛んになっています。
債務整理は弁護士と司法書士の仕事で、過払金の返還請求や支払条件の和解交渉
がメインになる業務です。
  過払金というのは、8年〜10年以上も消費者金融を利用して来た場合に利息制限
法で再計算した結果マイナスになった数字をいいます。 
つまり、マイナス分の利息を払い過ぎていたことになり、それは不当利得として返還
請求が出来る訳です。
  この請求額が業界全体では何千億という金額になっており、弁護士事務所や司法
書士事務所に過払金バブルを齎しているのです。
過払金の返還請求が急に増え始めたのは、平成18年1月にシティズ事件最高裁判
決が出て業者による「みなし弁済」の主張が認められなくなった頃からなのです。
それまでは提訴しないと返還して来なかったのが、この判決以後は提訴が不要に
なって依頼し易くなったのです。
  次に取引が8年未満の場合なら、再計算しても過払いとならず残元本が残ります。 
この残元本について、利息カット+3年程度の分割返済という条件の和解を取り付ける
のが債務整理の一般的なパターンです。  難しい法律知識を必要とする業務とは思
えませんが、弁護士と認定司法書士の独占業務とされているのです。
    
  平成20年で過払金と債務減額の総額が1兆円を超えました。   その一方で債務
整理トラブルが急増しているといいます。  弁護士や司法書士から法外な報酬を請求
されてトラブルになっているのです。
債務整理を依頼する人というのは多重債務者であり支払能力で問題がある人です。
そんな人から法外な報酬を平然と取るというのは、悪徳商法の2次被害と同じではな
いか。
  債務整理に掛かる一般的な報酬の相場は、着手金が1社4万円前後、過払金返還
の成功報酬が3割程度、債務成立の減額報酬が1割程度といったところです。
提訴しなくても簡単に過払金が返還される時代になったというのに、3割の成功報酬
は高過ぎる気がします。   訴訟事務に比べ難度が高いとは云えない業務の報酬と
してはかなり高額であり、何百、何千と依頼があれば大変儲かる商売であることは
間違いありません。   報酬が高くなる原因の一つは人件費の増加にあると思います。  
これらの債務整理を実際にやっているのは事務員なのです。  100人も事務員を抱
える事務所があるといいます。  
  従来から、弁護士や司法書士以外の者が法律事務をやることは弁護士法違反であ
るという議論があり、日弁連などはその立場を崩していません。
  債務整理トラブルとは、まさに日弁連が懸念していたことだったのです。
一方には弁護士の数が増えたのに訴訟が増えていないという現状があります。
しかし、債務整理は徒花のような業務であって、やがて減っていく業務なのです。
弁護士が本来やるべき業務或いは弁護士を必要としている業務は消費者問題とか
探せば他に沢山あると思われます。 
今、弁護士の職務開発能力が問われているのです。
 



                  行政書士田中 明事務所