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    < エッセー>  グラミン銀行とソーシャルビジネス
    
  ムハマド・ユヌスにより1983年に創設されたグラミン銀行がバングラデシュにあり
ます。  グラミンとは農村という意味で農村部の貧しい女性が主な貸付先です。
これまで銀行が貸さなかった貧困層に少額なローンを無担保かつ低利で貸す(マイ
クロクレジットという)ところに特徴があり、その目的も貧困層の自立を支援して貧困
から脱却させることにあります。
  このような事業をソーシャルビジネスといい、欧米を中心に盛んになっていますが、
グラミン銀行はその先鞭を付けた企業なのです。  ユヌスは2006年、ソーシャルビ
ジネスのひとつマイクロクレジットという手法を構築した功績によりノーベル平和賞を
受賞しています。
  ユヌスは元々バングラデシュ大学の教授であったが教えていた経済学という学問
があまり社会に役立っていないことに嫌気が差して、教室を出て近くのジョブラ村の
貧困問題の調査をしていた時、マイクロクレジットの構想を得たといいます。

  ところで、マイクロクレジットはどうのように貧困層の自立に役立っているのでしょう
か。  ユヌスが最初に始めた融資というのはこんなものでした。  
それまでジュブラ村の女性達は仲買人から材料を貰い竹細工を作ってささやかな
賃料を稼ぐ内職をしていました。   そこでユヌスは材料を購入する資金を融資すれ
ば、竹細工を自分で売ることで賃料より遥かに多い収入が得られると考えたのです。
  つまり、女性達を自営業者に育てれば自立が図れると思ったのです。
  ユヌスの考えは見事に当たり、グラミン銀行は成功しました。
現在、利用者は787万人を超えその内97%は女性で、80億7000万ドルを貸付けて
返済率は97.86%であるといいます。  
  しかも、グラミン銀行の総資産の90%は利用者の預金なのです。
     
 日本企業も生き残りを掛けてグローバル展開を図ろうとしています。   しかし、
日本を一歩外に出るとそこには貧困な人々が何億と暮らしています。  企業に社会
的責任があるとすれば、こおいう人々をただ見ているという訳にはいかないのです。
  ソーシャルビジネスというのは21世紀資本主義の究極の姿として出るべくして出て
来たのです。  欧米ではどんな社会的貢献をしているかと必ず問われるといいます。
  ソーシャルビジネスには収益の殆どを現地の事業拡大に回して本国に利益を還流
させないタイプも現れています。
  例えば、フランスのダノン社(グラミンとの合弁会社がバングラデシュでヨーグルトを
製造販売)、フランスのベオリア社 (グラミンとの合弁会社が水浄化事業)、イギリスの
ユニリーバ社(インドの農村女性によるシャンプーなどの販売を支援)があります。

  日本にもそんなタイプの企業が現れました。  不景気のなかTシャツのユニクロを
展開しているファーストリテイリングが99%出資してグラミン銀行との合弁会社をバング
ラデシュに設立して、農村部の女性に衣類を1ドル以下で販売させて自立を支援する
といいます。

 日本では高金利の消費者金融に低所得層が群がって多重債務問題を発生させまし
たが、アジアの西の方では全く次元の違う独創的かつ社会的発想の金融が起こって
世界に広まろうとしているのを目にしますと、同じ人間でも考えることがこうも違うもの
かと思います。




                行政書士田中 明事務所