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    < エッセー>  弁護士業界の真実

  西田研志弁護士の「サルでもできる弁護士業」(幻冬社)を一気に読みました。
近時の内幕物でこれ以上面白い本を私は最近読んだことがありません。 一刀両断
に弁護士業界を斬っています。
  今や弁護士が毎年3000人も誕生する時代です。 ほんの少し前までは僅か500人
でした。 パイがそう増えていないとしたら弁護士事務所が全て抱え込める訳もなく
就職出来ない弁護士、食えない弁護士が出て来くるのは当然の話です。
  その意味ではこの本は出るべくして出た本なのです。   それにしても自己否定
には凄まじいものがあります。  日本をダメにした最も大きな元凶は弁護士だと言い
切っています。  これまでの弁護士はまことに敷居が高く庶民の味方でもなんでもな
かったのです。   消費者トラブルを扱う弁護士などはごく少数でたまにいると弁護士
仲間からは仙人扱いされていました。   1件あたり100万円以上の報酬が入る案件
のみを年に30件程度こなすというのが、弁護士の平均像だったのです。  消費者トラ
ブルに巻き込まれ法的サービスを必要とする人が1千万人もいるのに、低額な案件とい
う理由で見て見ぬふりをして来たと西田弁護士は弾劾しています。
                      
  西田弁護士によって白日の下に晒された弁護士の実態は前々からそうではないか
と思われていたものですが、弁護士業界の内部にいる人からこのように告発された例
は今までなかったと思います。
  先進国で日本ほど悪徳商法が蔓延る国は他にないらしい。  こうなった一因は日
弁連による弁護士法第72条の「法律事務」の解釈にあると西田弁護士はいいます。   
つまり日弁連は事件性不要説に立っていて、弁護士による法律事務の独占が基本ス
タンスなのです。  その結果、弁護士事務所ではパラリーガルを多く使えず、これが
低額案件を受けられなくしている原因だというのです。
  日弁連の事件性不要説はもはや破綻しているのです。   法務省や検察庁の実務
ではずっと前から事件性必要説に立っています。  弁護士は欧米先進国が実際そう
であるように訴訟事務の独占で十分なのです。   訴訟以外の法律事務は基本的に
誰でも出来るようにするという自由化の要望が、弁護士の内部からも噴出し始めたの
です。   その先鞭を付けた本が、「サルでもできる弁護士業」なのです。

  アメリカには弁護士業務を代行するソフトがあって並みの弁護士よりいい回答を出す
という。 大前研一が著書「ハイコンセプト」の中で弁護士は今後要らなくなる業種だ
と云っています。 
  西田弁護士も同様のことを云っていましたが、これは少々極論だと思います。
実際、債務整理などはマニュアル化してパラリーガルでも十分対応可能なものです。
しかし、弁護士でなければという分野はやっぱりあります。
  結局、そおいう高度で複雑な分野は弁護士がやるとして、それ以外のマニュアル化
やソウト化が可能な分野は、隣接法律専門職やパラリーガルに開放されるという流れ
になるのではないか。
 専門性を持った弁護士しか生残れない時代が来たのです。   折角ロースクールを
卒業しても弁護士では食えなくて会社法務とか政界などに進出せざるを得なくなるで
しょう。   世間の荒波に揉まれながら自分の専門性見つけて弁護士になるというコ
ースを辿ることになるのでしょう。

  先日、日弁連の新会長に宇都宮健児氏が選出されました。 この人は弁護士業界で
マイナーとされていた債務整理・自己破産などの消費者問題を主に取り組んで来た異
色の弁護士です。  こういう人が選出されたということは弁護士業界の危機感の現れ
と読めますし、多分そう遠くない時期に従来の弁護士法第72条に関する見解を捨てる
のではという予兆が感じられるのは私だけでしょうか。




                  行政書士田中 明事務所