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        < エッセー> もし戸籍制度がなかったら



  最近、自分の先祖について遡れるところまで遡って資料を集め、自分との繋がりを家
系図にしたいという要望が高まりつつあるようです。 つまり、家系図ブームが起こってい
るのです。  当事務所でもその影響で依頼が結構増えています。  家系図というのは
事実証明に関する文書ですから行政書士の独占業務なのです。  行政書士の資格を
有しない者が業として家系図を作成すれば行政書士法違反となります。 巻物を作ってい
る表装師のところで家系図の原図は作れないのです。  つまり、家系図には行政書士
を必ず関与させることで事実証明書としての家系図の的確性を担保しているのです。
参考 → 判例でも「家系図は事実証明の文書に該当する為、その作成は行政書士業務である」と
       判示しております(平成19年10月24日釧路地裁網走支部判決)。


  さて、家系図に絶対不可欠なものは戸籍謄本等の収集です。  日本に完備した戸籍
制度があるお陰で1ヶ月もあれば必要な情報が集められます。  ただし、家系図作成が
目的で戸籍謄本等が取れる範囲というのは、戸籍謄本等に記載されている人又はその
配偶者、直系卑属若しくは直系尊属に限られています(戸籍法第10条1項)。  
注意! → 配偶者が請求出来るのは、妻なら夫の戸籍謄本等、夫なら妻の戸籍謄本等に限られます。 
      夫又は妻の直系卑属や直系尊属を請求することは出来ません。

 この範囲は行政書士に依頼した場合も同じです。  兄弟など傍系の戸籍は取れません
し、配偶者の直系尊属若しくは直系卑属も取れないのです。
※ 家系図が目的の場合、行政書士が職務上請求書で請求出来る範囲は本人が請求出来る範囲
  までとされています。
     参考資料 → 日本行政書士会連合会通知書

  もっとも、戦前の戸籍は家制度の下にありましたから、戸主の下に傍系の兄弟も同じ
除籍謄本に記載されており、直系の祖父母や曽祖父母の除籍謄本を請求すれば祖父母
や曽祖父母の兄弟についても期せずして知ることが出来ます。  しかし、兄弟の傍系を
下に辿るには兄弟本人に請求を依頼するしかありません。 
 
 ところで、戸籍謄本等の代理請求には、2通りの方法があります。
  イ 依頼者から委任状を貰い、委任状を使って請求する方法
    ※ 戸籍謄本等の代理請求は、委任状があれば誰でも出来ます。 その際、本人と代理人
       の運転免許証等の本人確認書類を添付する必要があります。

  ロ 職務上請求書を使用して請求する方法
     ※ 職務上請求書の様式が平成20年5月1日から変更されています。

  当事務所では家系図作成が目的の場合、委任状を貰っていますから、まずイの方法で
行い、ロは補充的に使っています。  委任状の返還を要求しても返還に応じない役所が
時々あるからです。 
  また、改正戸籍法が平成20年5月1日から施行されています。 行政書士が戸籍謄本等
の請求をする際には、職務上請求書には業務の種類・依頼者名の他、依頼者の利用の目
的及び利用方法並びにその利用を必要とする事由を記載することが必要になりました(戸
籍法第10条の2)。
  従前なら家系調査、相続人関係図の作成と記載するだけでよかったのですが、業務の
遂行上必要とする正当な理由をより具体的に明示することが必要になりました。
              参考資料 → 法務省HP 改正戸籍法の概要

  戸籍法の改正の背景としては、戸籍謄本等の不正請求の防止があります。 興信所な
どが行政書士を悪用して他人の戸籍謄本等を取らせ人権侵害(身元調査、婚約破綻等)を
発生させていたからです。  同和問題の関係者からの職務上請求書批判や改善要求は
根強く、法務省も遂に動いたというわけです。
  要するにこれは他人の戸籍謄本等を勝手に入手出来ないようにする趣旨の改正です
から、当事務所のように本人から委任状を貰って戸籍謄本等を代理請求している場合には、
何の影響もないのは云うまでもありません。



                        
                  行政書士田中 明事務所