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                                行政書士田中 明事務所


   < コラム >  

  ブラック登録のルールを確立せよ

  平成21年12月1日の改正割賦販売法では指定信用情報機関制度が創設され、過剰与信・過量販売
を防止する観点からクレジット会社には指定信用情報機関を利用して支払能力を調査する義務が課せ
られjました。
  ところが、その一方でクレジット会社による指定信用情報機関制度の悪用としか思われないことが起
こっています。  

  具体的に申しますと、支払い停止の抗弁を内容証明郵便で通知してクレジットの支払いを停止した顧
客に関し、クレジット会社がそれから6ヶ月位後にCICに「異動」登録をしていたという下記事例があります。
   販売店 サンテックス株式会社(平成23年2月倒産)、 契約類型 訪問販売
   商品 グリーストラップ浄化装置      参考グリーストラップとグリーストラップ浄化装置の関係
  この事例では、「営業の為若しくは営業として」の契約でないので、販売店の倒産によりメンテナンスが
債務不履行となったことが支払い停止の抗弁事由になると購入者が主張したのに対し、クレジット会社は
商行為になるので割賦販売法の適用がないの一点張りで平行線を辿っていました。
  クレジット会社からは和解の提案など一切なく、ただ一括支払の催告書を何度も送り付けて来るだけだ
ったといいます。

  そもそも、支払い停止の抗弁は割賦販売法で認められた正当な権利行使であり、支払能力の問題とは
無関係です。
  問題なのは、クレジット会社の担当者の判断で簡単にCICの「異動」登録が出来てしまうことです。    
そして、現行の信用情報の登録内容というのは、実にあっさりしたものでコメントなどはなくただ「異動」と
記載するだけだというのも問題です。
  この結果、この客から新規申込みを受けた別のクレジット会社の審査担当者がCICの「異動」登録を見て
支払能力のない客だと誤認して不決裁にしてしまう可能性が高いのです。
  つまり、支払い停止の抗弁を行使されて平行線を辿っていた場合に、クレジット会社はCICの「異動」登録
をしてしまえば一気に優勢な立場に立ち得るということです。
 こうなると顧客は以後クレジットが利用出来ないことになって困るので、残債の一括返済を条件にCICの
「異動」登録を抹消してほしいという申入れをクレジット会社にする選択肢しかもう残されていないことになり
ます。   ここにクレジット会社の狙いがあるのであって、残額の全額回収の可能性が一気に高まることに
なります。 
  しかし、このような信用情報登録制度の使い方は明らかに濫用であって、支払い停止の抗弁を理由とし
て「異動」登録すること自体が割賦販売法の趣旨に反することです。

  尤も、各クレジット会社の「個人情報の取扱いに関する条項」では、「申込者は、支払い停止の抗弁の申
出を行った場合、その情報が個人信用情報機関にその抗弁に関する調査期間中登録され、個人信用情報
機関の会員に提供されることに同意します」と記載されていることが多いようです。
  この条項の趣旨は、和解などにより解決するまで「支払い停止の抗弁の申出」として登録するが、延滞とし
ては登録しないということです。   尤もCICの説明に拠れば、支払い停止の抗弁により支払いが止まった
場合には空白にしてコメントなども付けないそうです。   何れにしても支払い停止の抗弁で「異動」登録を
するというのは有り得ない話なのです。  
しかし、上記クレジット会社は顧客と一度も和解交渉することなく、督促を続けた後に「異動」登録を行ってお
り、この条項を自ら破っているのです。

  このようなクレジット会社による濫用が許される最大の理由は、信用情報登録制度の登録に関する細かい
ルールが確立されていないことです。
  割賦販売法や省令には濫用を規制する条項は一切ありません。  経産省が当初予想し得なかったこと
が今起こっているのです。
  正当な理由による支払い停止の抗弁の行使があった場合、「異動」登録をしてはならない旨の規定を設け
るべきで、違反者には罰則を科すべきです。
 「異動」登録が許されるのは、和解が成立したのにそれを無視した場合とか、理由が正当でなかったことが
裁判で明らかになった場合などに限られるべきです。

  平成21年12月1日の割賦販売法の改正は、過剰与信・過量販売の防止という点からの近年にない大改正で
した。
  しかし、指定信用情報機関制度をクレジット会社が悪用して優良顧客の利用を制限したり残債の全額回収の
手段にしているとしたら、それはクレジット会社自身によるクレジットシステムの破壊行為であります。
  経済産業省には、信用情報登録に関するルールを確立してクレジット会社に対しては細かな行政指導を実施
して欲しいと切に願うところです。

  なお、クレジット契約に関する苦情は、下記で受け付けています。
東京都千代田区霞が関1-3-1
経済産業省消費者相談室  電話03-3501-4657
http://www.meti.go.jp/intro/consult/a_main_01.html

                                            2013.9.30

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