内容証明郵便でブレイク !  第7号
               平成15年10月18日発行

             今回の目次
        □ 特定商取引法って意外に奥が深い!
        □ 「未承認広告」って何?



   □ 特定商取引法って意外に奥が深い!
  
 初めに当り前のお話を書きます。
特定商取引法は悪徳商法を規制の対象にしていますが、
商取引そのものは禁止していないのです。
 業者に対する禁止といえば、不実の告知の禁止とか
威迫行為の禁止或は誇大広告の禁止といった程度です。

 つまり、営業することは原則自由なのである。
ただし一部不適正な勧誘行為をすると、消費者からクーリング・オフを行使されて
契約がパーになりますよといっているのです。
 マルチ商法だって、絶対破綻することが確実な商法であるのに、
ねずみ講のようには禁止されてはいません。

 詐欺に該当すれば別ですが、
手口が不適正だとしても商行為を禁止することは、
憲法第22条の営業の自由との関係でやっぱりムリなのです。
 逆に、業者の側に立つと、クーリング・オフを行使されたくないと思えば、
不適正な勧誘行為に当たらないように営業すればいいわけです。
 しかし、すべての業者がそのように行動するとは限りません。
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 結局、悪徳商法を完全になくすことは出来ないのですから、
消費者が自己責任で未然防止や解決に努めねばならないという状況は、
依然として変わりないのです。
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 悪徳商法に対する最大の防御は何か?
それは情報に尽きると、私は考えます。
 特定商取引法は、消費者にクーリング・オフという
伝家の宝刀を授ける法律です。
 手口を変えて繰出されて来る悪徳商法の研究成果がここにあります。

 この法律の障りだけでも頭に残っていたら、
悪徳商法の被害をかなり未然に予防出来るのではないか・・・・・・。
そんな思いから、微力ながら私も情報を発信しているのです。
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 さて、前置きはこれくらいにして、事例研究に入ります。

 『20歳のA君は、駅前で絵画展の特別招待券をもらい、
近くの展示会場へ行った。中に入ると販売員が付きっ切りになり、
あるシルクスクリーンの絵を指すと、「この絵とはもう会うことはない」 
「この絵は値上がりするから、後ではこの値段では買えない」などと、
3時間位勧誘され、「帰りたい」と言ったが、
契約しないと帰れそうにない雰囲気だったので、
クレジットで合計100万円になる絵を買った。 A君は 帰宅してから、
やっぱり高すぎるので、解約したいと思っている。』
                
 さあ、A君は、クーリング・オフを行使出来るでしょうか。
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 ・契約した場所の展示会場は、売る目的の絵を一定期間展示して
 販売している場合は、「営業所等」に該当します。
 ・「営業所等」で契約しているのですから、特定の誘引方法による販売
 (キャッチセールスやアポイントメントセールス)
に当たれば、
 クーリング・オフが使える特定商取引法上の「訪問販売」となります。
 ・A君は、駅前で偶然貰った特別招待券を見て、
 展示会場へ誘引されています。    

                
   ポイントは、絵の販売意図を明らかにしているか、
      又はA君がそれを認識し得たかである。


 ・販売意図を隠している場合は、アポイントメントセールスになります。
 特別招待券に絵の展示販売の記載があれば、該当しませんが、
 あっても字が小さくて到底一般の消費者が認識出来ないような
 ものなら、該当します

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 結局、まとも業者なら、アポイントメントセールスを回避する見地から、
特別招待券に絵の展示販売の記載をしていることが多いと思います。

 そうなると、A君はクーリング・オフが使えないことになります。
たたし、A君は勧誘がしつこくて、帰れない程に困惑しているので、 
消費者契約法で取消が出来る可能性は残されているでしょう。
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 このように、クーリング・オフは常に使えるとは限らないのです。
しかし、これなどはかなり強引な勧誘の商法です。

 もし、展示場がマンションやビルの一室で消費者の自由な出入りが
出来ない
場所であったり、展示会が1日で終わるものであったら、
その展示場は「営業所等」に該当しませんから、
「営業所等」以外の場所で契約した通常の訪問販売となり、
クーリング・オフが行使出来ることになります。
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 最近、こんな強引な絵画販売でトラブルとなるケースが多いそうです。
狙われているのは、20代の若者です。
 シルクスクリーンというのは、印刷された版画です。
つまり、人気作家の作品であるとはいえ、印刷された複製なのです。
何枚印刷されたか分らない複製に、100万円の価値があるのだろうか・・・・。
 というのが、私がまず抱く素朴な疑問です。
そして、今の若者はどうしてこんなに安易に高い絵を買ってしまうのでしょう。
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 余談ですが、私も版画が好きで銅版画を3点程買ったことがあります。
東京芸大を卒業したばかりの人の作品でしたが、
額縁付きで最高が5万円でした。
 3回くらい通って「いい絵だ」という印象は変わらなかったので、
買うことに決め、今でも全然飽きが来ず書斎に飾っています。

 版画というのは、この値段でもいい物が買えるのです。
もちろん、絵の価値は主観的なものですから、100万円でいいと思えば、
他人がどうこう言うべき問題ではないかもしれません。
 しかし、先のシルクスクリーンの絵でトラブルが発生しているところを見ると、
やっばりあの値段程の価値はないのでしょう。
 逆に、あんな風に強引に勧誘しないと売れない絵なのでしょう。

 絵を買う時は、一回で決めないことです。
買わないと思ったら、「帰らせてくれ」とはっきり意思表示して、
さっさと振り切って帰ることです。
 そして、日頃から、絵を見る目を養うことも大切になるでしょう。


  □ 「未承認広告」って何?

 時々、「未承認広告」というタイトルのメールを見かけます。
迷惑と言う程でもないが、何となく胡散臭くて、大抵は削除へ一直線です。

 それにしても、揃いも揃ってなぜ「未承認広告」と、表示するのでしょう・・・。
実は、この表示も特定商取引法によって、業者に義務付けられているのです。 
 迷惑メール対策として、平成14年7月に、電子メール広告の場合における
表示義務を追加した同法の改正施行規則が施行されてからのことです。
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 平成14年7月には、「特定電子メール法」という新法も施行されています。
特定商取引法では、販売業者及び役務提供事業者が規制の対象だったのに対して、
特定電子メール法では、送信者を規制の対象とし、
迷惑メール対策を強化したわけです。
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 ついでに、「特定電子メール法」と名称がよく似た法律に
「電子契約法」というのがあります。
 正式名称は、「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する
民法の特例に関する法律といい、平成13年12月25日から施行されています。

 こちらは民法の特別法で、電子商取引の場合における契約の成立時期に関し、
承諾の意思表示が相手方に到達した時としています。
 通信障害など通知が届かない場合でも契約が成立するという事態は、
これで回避されたわけです。
 電子商取引関係の法律は、まだ本当に出来てホヤホヤというものばかりなのです。

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