内容証明郵便でブレイク !  第32号
               平成17年7月28日発行            

             今回の目次
        □ 公証人が使う公正証書遺言の文言 その2
        □ 日公連 VS 銀行協会



    □ 公証人が使う公正証書遺言の文言 その2

 「マンションをAに遺贈する」とすればいいのに、
公証人が「マンションを遺言執行者に売却させ、諸経費を控除した残代金を
Aに遺贈する」と、記載することがあります。

 わざわざマンションの売却まで遺言執行者にさせるのは、
受遺者が遠方にいて不便だからとか、
要するに受遺者の利便を考慮してのことらしいのです。
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 しかし、遺言執行者から見ると、
これは遺言執行の事務を甚だ煩瑣にするのです。

 何が煩瑣かと言うと、登記関連の事務です。

「マンションをAに遺贈する」であれば、遺言執行者と受遺者が
遺贈登記を共同申請すれば完了です。
受遺者の戸籍謄本と委任状があれば、もう簡単に出来ます。

 しかし、「・・・・ 代金を遺贈する」になっていたら、さあ大変です。
まず法定相続人全員の相続登記をし、次に買主と遺言執行者の共同申請
で所有権移転登記をするという2段階の流れになります。
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 相続登記には、法定相続人全員の戸籍謄本と住民票が必要です。
被相続人に子も配偶子もいなければ、兄弟が法定相続人になり、
死んでいる場合はその子が代襲相続します。

 被相続人に兄弟が多くしかもほとんど亡くなっているとすれば、
相当な数の子が代襲相続人になります。
 代襲相続人全員の戸籍謄本を収集するのに掛かる労力と時間は、
決して馬鹿にはなりません。

 結局、このような文言にすべきかは事前によく検討すべきなのです。
事後の事務の煩雑さと秤に掛けて、相続人の数が多そうと思ったら、
何も無理にこの文言を使う必要はないというのが、
私の結論なのですが・・・・・。


   □ 日公連VS銀行協会

 公正証書遺言による銀行口座解約の手続きを巡って、
日公連と銀行協会が対立しています。

 公証人は公正証書遺言に遺言執行者が定めてあれば、
遺言執行者の印鑑で解約出来ていいではないか、と主張しています。
銀行の中には、まだ法定相続人全員の印鑑を要求しているところがあるのです。
                 ※

 これに対する銀行協会の反論はこうです。
公正証書遺言には、無効になるものが毎年出ている。
特に、痴呆高齢者や病人の公正証書遺言が、口授を欠き
方式違反として無効にされるケースが目立つというのである。

 口授と言っても、実際は遺言者が話すのを聞いて書き取るのではない。
公証人が事前に内容を聞いて原案を作成して置き、
当日は遺言者の前で読んで確認するという方法が通常なのです。

 結局、遺言者は頷くだけでよく、30分もあれば終了する。
しかし、この方法だと遺言者の周囲の者の主導で作られる危険、
つまり遺言者の遺言能力に問題があるのに看過されてしまう危険があるわけです。
                  ※

 銀行協会はこれまで何度も警鐘を鳴らして来たのに、
一向に改善されないと批判するのである。

 そんなことで口座解約の対応については、
各銀行の判断に委ねることにしているというのです。

 銀行協会の言い分にも一理はあるように思えます。
遺言能力をちゃんと担保する方式を確立する必要があることは、
間違いないところかと思うのですが・・・・・。

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