内容証明郵便でブレイク ! 第24号
平成16年11月13日発行
今回の目次
□ 貸室明渡し時の原状回復義務の範囲
□ 内容証明郵便の文案について
□ 貸室明渡し時の原状回復義務の範囲
原状回復義務の範囲については、民法に規定があるわけではありません。
賃貸借契約を解約すると、将来に向かって効力が生じますから、
売買契約の解除とは違って、原状回復義務が当然に生じるというものではありません。
つまり、賃貸借契約の場合の原状回復義務とは、当事者の合意によって
初めて発生するものなのです。
大家としては、破損箇所があるのに、そのままにして出て行かれても困るので、
賃貸借契約書に原状回復義務の条項を入れ、
さらには特約でクロス総張替えやハウスクリーニングの義務まで定めています。
そして、その修繕費は敷金から控除することで担保しています。
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しかし、近時はこの修繕費が多すぎて、
敷金が余り戻って来ないということでトラブルになっています。
これが所謂、敷金返還問題です。
さて、なぜ明渡し時にこんなに修繕費が掛かるのでしょうか。
それは大家が、新しい入居者を早く見付ける為に、破損箇所を直すだけでなく、
ハウスクリーニングやクロスの総張替え、畳・襖の総取替えまでして、
ピカピカの貸室にリフォームするからなのです。
その費用は、20万〜40万円は下らないはずです。
そして、その費用の一部を、原状回復義務や特約条項を根拠に、
借主に負担させようとするのです。
明渡し時に破損箇所などなかったと思っていた借主が、怒るのも無理はありません。
結局、大家と借主が考える原状回復義務の範囲が大きく違うことが、
トラブルの最大の原因なのです。
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判例の態度は、自然損耗分の修繕義務は借主にないとしています。
つまり、通常使用による損耗等は自然損耗であり、貸主に修繕義務があり、
敷金からはその修繕費を控除出来ないということです。
そして、借主の負担する原状回復義務とは、借主の故意・過失、善管注意義務違反、
通常使用を超えた使用により損耗・棄損させた場合に生ずる復旧義務のことであると、
狭く捉えているのです。
また近時の判例では、自然損耗分を借主の負担とする特約を、
消費者契約法により無効と判示しています。
このような判例がある以上、
大家がリフォーム総費用を借主に請求出来ないのはもとより、
貸主の責めに帰せられるような損耗・破損がない場合には、
原状回復費として借主に請求することは一切出来ないことになります。
請求しても、少額訴訟で負けるリスクが常にあるからです。
もっとも、通常使用による損耗か、通常使用を超えた使用による損耗かの判断が
難しい場合もあります。
実際的にも、少額訴訟では敷金から平均20%〜30%カットした金額で、
和解しているようです。
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賃貸借契約書を見ていると、実にさまざまです。
クロス総張替費やハウスクリーニング代を、当然の如く特約で借主負担
としているものが多い一方、自然損耗分を除外しているケースも稀にあります。
結局、不動産仲介業者が大家に一方的に有利に作った賃貸借契約書が、
昔からそのまま使われているのが大方のようです。
しかし、今は少額訴訟になったら負けるような契約書をそのまま使うことが、
決して大家の為にならないという時代になったのです。
□ 内容証明郵便の文案について
内容証明郵便とは、一般的には通知書であり、それ以上の法的効力はありません。
しかし、文案については、何を書いてもよく、制限といえば、枚数の上限が5枚の他は
ほとんどありません。もっとも、これは電子内容証明郵便の場合ですが。
電子内容証明郵便が出来たことで、長い文章を載せることが出来るようになりました。
A4の紙なら4枚分の分量が限界でしょうが、それでも以前の形式に比べると、
10倍は情報を載せられます。
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それを利用しない手はありません。
結局、行政書士の民事法務とは、裁判外で協議して、
事案が争訟性を帯びる前に1回的に解決することを目差しているのだろうと思います。
そうならば、文案を工夫する余地があるのではと、私は思うのです。
これまでの内容証明郵便というのは、単に事実や経緯を通知するだけでした。
何となく最後通牒のように使っていたのです。
裁判を本業とする弁護士なら、それでよいかもしれません。
しかし、行政書士の書く内容証明郵便が、これと同じである必要はありません。
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要するに、相手を説得出来て裁判をせずに解決するのがベターだ
という気持ちにさせられるように書くことが、肝要と思うのです。
法律学とは、説得の学問であると言います。
その説得力が最も結晶化しているものが、判例なのだろうと思います。
とすれば、判例を分かり易い文章にして挿入して見るというのも、
決しておかしくないはずです。
私の例でいいますと、事実関係や経緯をまず丁寧に書きます。これに対して、
判例ではこう判断していますと書きます。結局、裁判になって争っても、
結論は見えていますよという雰囲気にします。
それは中々大変なことで、文案作成に結構時間が掛かります。
しかし、1回で事案が解決した時の喜びには、実に大きなものがあります。
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