内容証明郵便でブレイク ! 第12号
平成15年12月20日発行
今回の目次
□ 自ら権利行使する者のみが救済される
□ 広い消費者契約法の適用範囲
□ 自ら権利行使する者のみが救済される
消費生活センターに寄せられる年60万件とも70万件ともいわれる苦情・相談件数
の内、70%は契約・解約に関するもので占められるそうです。
巧みな勧誘に乗せられて契約書につい署名したが、後でゆっくり考えて見ると、
「要らない物を買わされてしまった。解約を申入れたが、応じてくれない」
と思い悩んでいる人が、どれ程多いことでしょう。
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世の中には、クーリング・オフは別として、契約の解除は難しいという常識が
罷り通っています。
消費生活センターのパンフレットを見ると、大抵次のように書かれています。
「契約すると当事者に拘束力が働きます。互いに契約内容を履行する義務が生じ、
自己都合で勝手に解除することは出来ません。
ただし、例外的に契約の拘束力が解かれる場合として、
法定解除、約定解除、合意解除があります」
この記述は決して間違いではないのですが、
何とも教科書的記述で、実務の現場の匂いを感じさせないのです。
消費者が解約に関し苦情を申立てる場合というのは、
業者の勧誘が不適正だったり、業者の情報提供義務が不十分だったり、
情報・交渉力の格差が是正されないまま契約させられたという場合が多いのです。
もし、そのまま契約の拘束力を維持させたら、
「取引の公正」や「消費者の損害防止」に反するという場合が多いのです。
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私の事務所にメールで相談して来る事案も、
そのような契約の拘束力から離脱させて然るべき事案がほとんどです。
そして、大抵は初期段階、つまり契約はしたが、
まだ履行前なので解約出来ないかというものです。
色々事情を窺って見ますと、やっぱり業者は情報提供義務を果たしていないのです。
消費者の情報・交渉力の足りなさに付け込んで、強引に契約させているのです。
一昔前だったら、契約した以上はもう諦めるしかないと観念するところでしょう。
しかし、今は消費者契約法が施行され、事業者に情報提供義務を負わせ、
「不実の告知」「故意の不利益事実の不告知」などで 消費者が誤認した場合、
取消が出来るとしています。
消費者契約法は民法の特別法であり、詐欺や錯誤に至らなくても、
契約の解消を認める画期的な法律なのです。
ただし、消費者契約法はまだ新しく、
適用事例の蓄積を待たねば見えて来ないという部分が多々あります。
広範な適用が期待されるのは、これからなのです。
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それはそれとして、契約の解消に関して言えば、
消費者契約法がすべてではありません。
私は何を言いたいのかといいますと、これまで有力な学説や判例で
取り上げられて来た法理も活用して見よということなのです。
例えば、実際の表示と消費者の食違いが大きい場合、
当事者に意思表示の合致がなかったとして、契約を不成立とする法理があります。
この法理は、消費者の真意を重視します。
一般的には、外部に現れた表示で一致があれば、
つまり契約書にサインがあれば、契約が成立しているとされます。
しかし、消費者の真意がこれと大きく食違っていて、
しかも業者がそのことを認識出来たという場合、
この法理は意思表示の合致を否定するのです。
もちろん、 表示と真意の食違いが、業者のトークや勧誘行為或は不実告知に
よって生じたものであることは、当然の前提とされます。
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次に、「契約締結上の過失に基づく解除」の法理があります。
この法理は、これから契約を締結しようという業者は、消費者が不測の損害を
蒙らないよう配慮する義務を信義則上負っているとし、
この義務違反がなければ消費者は契約しなかったでろうと認められる場合、
消費者は契約を解除出来るとします。
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これらの法理は、判例で確立されたわけではありません。
しかし、主張することは一向に構わないのであり、
主張することによって合意解除の道も開けて来ます。
要は、「この契約は不本意だ、解除出来て当然だ」と思ったら、
解除する理由を懇懇と真剣に業者に説くことではないか・・・・。
その際の合理的な理由付けを、これらの法理は提供していると、
私は考えるのです。
自ら権利行使して、初めて救済されるのです。
もう駄目かと諦めていたり、泣寝入りしていたら、
法は絶対保護してくれません。
自分では理由付けが分らないという方は、当事務所にご相談下さい。
□ 広い消費者契約法の適用範囲
消費者契約法は、わが国初の画期的な全体的消費者保護法といわれます。
特定商取引法が主として悪徳商法対策の法であるのに対して、
消費者契約法は労働契約を除く消費者契約すべてに適用されるからです。
消費者契約とは、消費者と事業者の契約をいいます。
そして、その事業者とは、「法人その他の団体」及び「事業として又は
事業のために契約の当事者となる場合の個人」です。
つまり、営利、非営利に関係なく、互助会・共済会、商店会、ゴルフクラブ、
スポーツクラブ、学術団体、自治会、弁護士事務所、行政書士事務所といった
団体も対象になります。
一方、消費者とは、事業のために契約の当事者となる場合の個人を除く
個人です。ですから、例えば事業者でも社員に水を飲ます為に浄水器を買った
という場合は、事業のために契約したのではありませんから、
消費者として扱われます。
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さて、消費者契約法第3条では、「事業者が契約の内容についての必要な
情報を提供するよう努めなければならない」と規定しています。
努力規定である為、義務違反から直ちに取消権や
損害賠償義務が発生するわけではありません。
しかし、業者の不法行為における違法性の認定或は消費者契約の解釈や
拘束力が問題となる場面では、
情報提供義務違反の有無が当然に大きく影響してくるといわれます。
ですから、後で不利になりたくないと思ったら、事業者は契約締結段階で
この情報提供義務を十分に尽くす必要があるのです。
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