内容証明郵便でブレイク !  第11号
               平成15年12月14日発行

             今回の目次
        □ 泣かない連帯保証人
        □ 連帯保証人を救済する消費者契約法



     □ 泣かない連帯保証人
 
 連帯保証人には、頼まれてもなるなとはよく聞きます。
とにかく、連帯保証人の責任が非常に重いからです。
 通常の保証人なら、債権者から請求があっても、まず主たる債務者に催告しろとか、
債務者の財産に強制執行してからにしてくれとか、抗弁することが出来ます。
 ところが、連帯保証人には、この催告・検索の抗弁権がないのです。
従って、その責任は主たる債務者と全く同じといってよく、逆に債権者から見ると誠に
都合のいい保証人なのです。
 
 こんな債権者に有利過ぎる連帯保証人ですが、日本では債務者との人間関係から
案外簡単に引受けてしまう人が後を絶ちません。
 しかし、いったん債務者がコケルと大変なことになります。
 その時になって、あれは債務者に騙されてなったのだと主張しても後の祭りで、
そのことを債権者が認めない限り、裁判になっても勝ち目はありません。
 裁判所でさえ、連帯保証人の酷な結果を救済出来ないのです。
こんな可哀相な連帯保証人を、
判事さん達は「泣く連帯保証人」と呼んでいるそうです。
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 さて、中小企業主が金融機関から融資を受ける場合、
連帯保証人に社長やその親族がなるというのが常態化しています。
 多くの金融機関は銀行協会連合会の銀行取引約定書というひな型に準拠していて、
社長その他の連帯保証がないと融資出来ない形式になっているのです。

 しかも、連帯保証人からの差入れ方式、
つまり銀行のみが1通の契約書を保持するという形式を長年続けていました。
 もっとも、近年これはあまりにひどいということで、
保証契約書は双方が署名の上、1通ずつ保持することに訂正されました。
 
 しかし、実をいうと、アメリカにはこんな連帯保証人制度なんかないのです。
日本のこの制度は、結局金融機関の審査能力を含めた経営責任を
連帯保証人に転嫁しているとの批判が強いのも事実です。
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 さて、銀行取引約定書に基づく連帯保証というのは、
いわゆる包括根保証と呼ばれるものです。
 つまり、金額の限度も、保証期間の制限もないのです。
継続的な取引を現在及び将来に渡って網羅的に担保する必要から、
民法にも規定のないこのような根保証が考え出されたのです。
 一方、連帯保証人には過大な責任を負う危険があります。

 そこで、判例では古くから、次のように包括根保証人を保護しています。
 ・一定期間経過後は、根保証人から一方的に解約が出来る
 ・債務者の資産内容が著しく悪化したというような特殊事情が生じた時は、
  将来に向かって一方的に解約出来る
 ・また、包括根保証人の地位は、既発生債務の保証を除き
 相続により承継されない
としています。
  つまり、被相続人の死亡が、根保証契約の解約事由になるのです。

 ですから、包括根保証人はうまく取消権を行使すれば、
「泣く連帯保証人」にならなくて済む場合があるということです。

 一方、銀行にとってこのような制限は不利益なわけですから、
保証限度額を定めた制限根保証切り替える傾向にあるとされます。


 
  □ 連帯保証人を救済する消費者契約法

 包括根保証人は取消権を行使出来るといっても、
それは将来発生する保証債務に関してであり、
既発生債務については、責任は免れません。
 ですから、連帯保証人に酷な結果というのは依然として存続しているのです。
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 しかし、消費者契約法という消費者契約全般に適用される法律の施行により、
「泣く連帯保証人」から救済される余地が出て来ました。

 具体的には、こんなケースが想定出来ます。

 「コンビニを経営する親戚の者から、コンビニは順調で自宅が担保に入って
いるので迷惑は掛けないからと熱心に頼まれ連帯保証人になった。
しかし、半年後にコンビニは倒産し、実は2年前から経営状態は悪く、
銀行から不動産担保では足りず、連帯保証人を付けないと融資出来ないと
言われていたことが判明した。」
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 保証契約とは、債権者と保証人との契約により成立しますが、
本件では親戚の債務者が仲立となり、
その者が嘘つまり「不実の告知」をしています。
 しかし、銀行には保証契約の締結に際して、保証額、債務者の経済状況、
返済の見込み等の重要事項を連帯保証人に説明する義務があります。

 そして、銀行が債務者の状況を説明していたら、
連帯保証人はまず契約しなかったはずです。
 つまり、銀行が当然の説明義務を尽くさなかったことにより、
仲立に入った債務者の嘘を本当だと誤認して、連帯保証人となったのですから、
実質的には、銀行の「不実の告知」として評価するのが妥当ではないのか・・・。
 こうして、私は本件の場合、連帯保証人に保証契約の取消が出来ると
考えるのです。

 しかし、この考えはまだ判例として確立されたわけではありません。
消費者契約法には、このような活用の可能性もあるのでは、
というお話でした。

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