内容証明郵便でブレイク !  第10号
               平成15年11月28日発行

             今回の目次
        □ いい判例を紹介します
        □ 情報提供義務と消費者契約法



   □ いい判例を紹介します
 
 本メルマガ第7号で、シルクスクリーン絵画販売のトラブル事例を書きましたが、
この被害者はやっぱり泣寝入りしかないのかと思われた読者もおられたでしょう。
 クーリングオフも適用されず、 消費者契約法の「監禁」にも当らないとなれば、
詐欺を立証しなければ、契約解除は難しくなるからです。

 何枚でも刷れる版画を100万円という不当に高い額で買わされた被害者は、
本当にもう救済されないのか、こんな商法が許されるとしたら、
世の中は少し変だと思っておりましたら、
そんなモヤモヤを一蹴するいい判例を見付けました。
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 司法はさすがです。
こんな売買契約は、商道徳を逸脱した違法なもので公序良俗に反し無効と判断し、
被害者にクレジットの支払停止の抗弁を認める判決を下していました。
    (青森地方裁判所十和田支部平成13年12月27日判決)

 これを見た時は、気分がスカッとして、一日愉快でした。

 この判決の最大のポイントは、シルクスクリーン絵画販売の暴利性を
認定したことです。
 その判決理由を、以下で整理して見ます。

 Y 消費者   A 絵画販売業者   B Aの従業員  C Xの従業員
 X クレジット会社
 ・ Yは、大手スーパーの店舗内の個室において、シルクスクリーン絵画1点を
  82万9千円、クレジット総額113万1750円(月額1万8千円の分割)で購入した。

 ・ シルクスクリーンの流通価格は14万6千円程度なのに、
  売買価格を82万9千円とするのは、暴利行為である。
 ・ 本件絵画の作者は多作で、作品によっては300枚程度の原画が
  存在することが窺え、限定版とか極めて少数の原画しか存在しない事実は
  窺われない
 ・ 実際のクレジット支払月額は1万5千円なのに、Bが社員割引を適用するから
  1万円程度になると勧誘したのは、Yに重大な誤解を生じさせかねない極めて
  不相当な方法による勧誘である。
 ・ 割賦販売法は過剰与信の防止に努めるよう求めているのに、
  CはYの年収を確認したのみで、その支払能力を確認した形跡はなく、
  Bに対してYの支払能力を確認した形跡もない。

 これらを総合して、本件売買契約は公序良俗に反し無効とし、
Xの支払請求を拒否しているのです。
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 判決は個別案件毎に下されるので、全ての契約がこうなるとはいえません。
しかし、非常に意味の大きい判断がそこにはあります。
 つまり、シルクスクリーン絵画を82万円で販売することは、
暴利行為として無効だということです。
 裁判所はこの強引な絵画展示会商法を、全面否定したのです。

 特定商取引法や消費者契約法の砦を突破されても、
公序良俗違反(民法90条)で救済されることがあるのですから、
泣寝入りしたり諦めるぺきではないのです。
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 この判決は、内容証明郵便の作成業務を行う上で、
大変強力な援護射撃となります。
 公序良俗違反という主張は、解約が難しい場合に、
最後の勝負を挑む隠し技として使えそうだからです。


   □ 情報提供義務と消費者契約法

 消費者契約法は、多分これから活用の場が増える法律となるでしょう。
よく消費者は、トラブルに遭遇すると、
「騙されて契約した。この契約は詐欺だ」といいます。
 しかし、実際に詐欺を立証することは中々難しいのです。
でも、心配は無用です。今は消費者契約法があります。
詐欺を立証出来ないケースでも、「不実の告知」により誤認したことを
立証して、契約の取消が出来るからです。
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 「不実の告知」とは、契約の重要事項について、
客観的に真実又は真正でないことを告知することです。
 告知する者が、自分で真実又は真正でないと認識していなくてもいいのです。
例えば、「事故車でない」と告げられ、それを信じて車を買い、
整備に出したら事故車だったという場合、
「事故車でない」が「不実の告知」になるのです。
 ただし、告知者の「美味しいです」とか「優れています」とかいった表現は、
告知者の主観的価値判断ですから、
後で違っていても「不実の告知」にはなりません。
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 さて、事業者の情報提供義務とは何か。
これは消費者と事業者間の情報・交渉力の大きな格差が、
そもそも消費者トラブルの最大の原因となっていることから、
その格差是正への努力義務を事業者に求めたのです。

 提供すべき情報の範囲は、契約に必要な情報とされ、やや漠然としています。
事例の蓄積に伴って、具体的にその範囲も煮詰まって来るのでしょう。
 事業者の努力義務だからといって、軽くは見れません。
勧誘の中で情報提供に不足があれば、当然
「不実の告知」があったかの認定もされ易くなると思われるからです。
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 では、こんな場合はどうでしょうか・・・・・。
中古自動車の売却契約で査定額が20万円だったが、かなり安い気がしたので
車の引渡し前に他の業者に査定を依頼したところ、50万円の査定額を提示された
という場合、「不実の告知」を理由に売却契約の取消は出来るだろうか。

 その差額が通常考えられる査定の誤差を大きく超えている場合には、
客観的に真実でないことを告知したといえるのではないでしょうか。
 その時、担当者が根拠等を示して信頼を得るような説明をしたか、
つまり必要な情報を提供したかも当然問われるだろうと、私は考えるのです。

  実際どう運用されるのかが、これから少しずつ分ってくるのが
消費者契約法なのです。

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